植毛における手術手技の変遷
■ 植毛の始まり
生毛植毛術は、1939年に奥田医師がその理論、臨床について初めて報告したとされています。奥田医師は、頭に火傷を負って脱毛してしまった部分に毛包を含む皮膚移植を試み、移植された部位において毛髪が育つことを発見しました。
■ punch graftと人工毛植毛
1960年代には、米国の医師Orentreichが薄毛に対する治療法として、後頭部・側頭部の毛髪を脱毛部位に移植する自毛植毛の理論を確立しました。
彼が開発したpunch graftと呼ばれる方法は、1990年初頭まで主な術式として普及していきました。punch graftは、直径3~4㎜、10本程の毛髪をまとめて移植していく為、移植部位が凸凹になる、生え際が不自然に見えるなどの欠点を抱えていました。
日本では、カツラ・増毛業界が力を伸ばし、自毛植毛の普及は一部の特殊な治療などに限定されていました。その間、人口の毛を植え込むという「人工毛植毛」を行う施設が出てきましたが、非常に多くの問題を抱えていました。頭皮及び頭蓋骨まで悪影響を及ぼすことも知られ、米国では現在、人工毛による植毛は全面的に禁止されています。
■ 自毛植毛術の進化
1990年代に入ると、多くの医師・研究者が生毛植毛術の開発に携わるようになり、生え際の自然さを改善する意味でより小さな単位での移植が追求され、mini graftさらにmicro graftへと植毛術は変化していき、様々な手法が開発されていきます。
また一方で、1990年代なって韓国のChoi医師が発明したChoi式植毛器を使用した植毛術が日本で普及を見せます。Choi式植毛器の最大の特徴は、移植の為の穴を開ける作業と移植毛の挿入が同時に行える点で、出血が少ない、痕が残りにくいという利点を持っています。
このような発展を遂げてきた植毛術ですが、最大の問題は、植毛のスピード化という問題でした。細かい単位での移植になるほど、株分け作業や移植に多くの時間が必要とされます。
時間が経つほど、患者さんへの負担は大きく、毛髪の生命力も弱って定着率も落ちてしまいます。また、何回にも分けて来院しなければならないという問題もありました。
■ オムニグラフトと植毛の普及
このような状況の中、自毛植毛が最も積極的に行われているアメリカやフランスで開発されたオムニグラフトと呼ばれる植毛機器は、高度な医療技術の自動化に成功しました。アメリカの「FDA」、EUの「CE MARK」の認可を受け、欧米社会で植毛の飛躍的な普及を支えることになりました。
この技術によって、数時間に及んでいた株分け作業が数分に短縮され、より生命力の高い毛髪を手早く移植することが可能になりました。国内の形成外科医の評価も高く、高度先進医療研究会をはじめ、多くの医療機関、研究機関でその有効性が認められ、今後の普及が期待されている方法です。今後も更なる技術の進歩が期待されています。








